コロナ感染症の特徴的な現象

 感染情報に関連する社会の仕組みにも問題がある。コロナが人を媒介して感染していく反応速度( コロナ系反応速度 )と人間の集団がそれの属する社会の仕組みから情報を得て対策を講じる反応速度( 人間系反応速度 )を比較すると、前者が「分や時間、日」の単位であるのに対して、後者は「週や旬、月」の単位になり可なり遅い。この反応速度の差により、人の感染対策が遅れている間にコロナは更に感染を広めてしまう。リアルタイムに行動した人がコロナを介して素早く感染を広め、広めた結果の感染情報を2週間後に取得した人間がその情報を利用して後手の感染対策を実施する。

 コロナの感染拡大がある規模にまで達すると、感染拡大の増加率が減少傾向に転じ、その上に人の抑制作用が効果的に働くようになると感染拡大は増加から減少に変わり、新規感染者数は急速に減少する。その後、閉鎖領域内でのコロナの増加が飽和状態に近づくと人の抑制効果によって感染者数は減少し続けるが、抑制効果が緩和されると閉鎖領域内の感染環境が変化し、新規感染者数は下げ止まり状態になったり、再び増加する現象が現れるようになったりする。変異株の出現やイベントの開催などの現象が付加されると大きな感染波となり再成長する。

 情報を利用するタイミングによって、感染が急激に減少したり、感染鎮静化の傾向が下げ止まり状態になったり、急速な感染拡大の現象が生じたりするようになる。感染力の高いデルタ株やオミクロン株の場合、両者の反応速度の差が更に拡大し、感染速度を変化させ感染抑制作用を複雑にする。いずれの反応も人間の行動がきっかけになるが、コロナの反応速度が高速なのに対して人間系の反応速度が遅く制御が不十分になる。この現象を繰り返しながら波動を伴う感染を拡大させていくことになる。

 感染鎮静化を効果的に実現させる最も重要な時期は、一度感染が広まってその後、新規感染者数が大幅に減少したタイミングであって、東京都の新規感染者数では100人/日前後の数値になった時であろう。この時期に行う対策としては、制限を緩和することではなく、一時的に規制を強化して数値が0近辺まで減少することを一定期間確認するか、または従来の規制を1ヶ月程度延長して数値が10人/日以下の日数が安定した状態で現れ、一定期間維持できるかどうかを確認することである。さもなければ、感染者数の減少理由が医科学的に適切に説明でき、多くの専門家が納得できるかどうかになる。この過程を得ずに政治家が規制緩和を強行するなら、失敗した場合は政治家が責任をとって辞める決心をさせてから実施するべきである。過去の例では、政治家の包括的にきめた判断の結果で多くの場合に失敗している。特に、コロナ系と人間系の社会結合条件が大きく変化する事態を発生させると閉鎖領域の感染環境が大きく変化して問題になる。国家的な大規模イベントの実施や水際対策の不備が原因で新しい変異株が国内に感染拡大するきっかけをつくらないことが重要である。